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最高裁判所大法廷 昭和28年(あ)1611号 判決

主文

本件上告を棄却する。

理由

弁護人奥江秀一の上告趣意について。

論旨は、原判決の判例違反をいうけれども、所論の事項は被告人において控訴趣意において主張せず原判決も判断しないところであるから、上告適法の理由とならない。その余の論旨は単なる法令違反、事実誤認及び量刑不当の主張であって刑訴四〇五条の上告理由に当らない。

よって刑訴四〇八条により、後記裁判官の少数意見を除くその余の裁判官一致の意見で主文のとおり判決する。

裁判官真野毅、同小谷勝重、同藤田八郎、同河村又介、同谷村唯一郎、同小林俊三、同垂水克己の少数意見は、本件において被告人が密輸入をしたとされている大島郡笠利村は北緯二九度以南、北緯二七度以北の南西諸島であって、本件犯行当時においては、関税法の適用については外国とみなされていたのであるが、昭和二八年一二月二五日以降は、外国とみなされなくなった。かかる場合においては、右地域が外国とみなされていた間に、右地域より密輸入した罪については、犯罪後の法令により刑の廃止があったものと解し、被告人に対しては刑訴四一一条五号により原判決を破棄し同法三三七条二号を適用して、被告人を免訴すべきものであること昭和二七年(あ)第四三四号同三〇年二月二三日言渡大法廷判決記載の真野、小谷、藤田、河村、谷村、小林各裁判官の少数意見のとおりである。

裁判官小林俊三は、この点に関し、前記大法廷判決記載の同裁判官の意見と同一の意見を附加する。

(裁判長裁判官 田中耕太郎 裁判官 栗山 茂 裁判官 真野 毅 裁判官 小谷勝重 裁判官 島 保 裁判官 斎藤悠輔 裁判官 藤田八郎 裁判官 岩松三郎 裁判官 河村又介 裁判官 谷村唯一郎 裁判官 小林俊三 裁判官 本村善太郎 裁判官 入江俊郎 裁判官 池田 克 裁判官 垂水克己)

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